香港の観光業はパンデミック後の低迷から着実に回復しつつある。この回復を加速させるため、香港の観光当局と企業は世界中から観光客を誘致する取り組みを強化している。その重点ターゲットの一つが、中東諸国およびシンガポール、マレーシア、インドネシアなど近隣の東南アジア諸国からのムスリム旅行者だ。
香港を訪れるムスリム旅行者が一般的に直面する問題には、広東料理に豚肉と料理酒が広く使用されていること、祈りのスペースやホテルでの洗浄用ビデシャワーの不足などがある。前者の問題により、多くの旅行者は自国と同じ東南アジア料理を食べることを余儀なくされ、後者はさらなる不便を引き起こしている。また旅行者からは、ホテルに女性専用フロアやアラビア語の案内表示を設置すべきとの提案もある。
昨年以来、香港のレストランでハラールおよびハラール・フレンドリー認証を取得する動きが活発化し、市内のハラール認証レストランは80%増加して180店舗以上となった。また、ムスリム・フレンドリー評価を獲得するホテルも増えている。新規参入店の多くは裕福な旅行者をターゲットとした高級店である一方、既存店の大半は地元ムスリム住民や出稼ぎ労働者向けの手頃な価格の食事を提供している。香港のレストランでは、豚肉を牛肉に置き換え、料理酒を使用しないなど、広東料理の革新も進んでいる。
香港当局者が最近湾岸諸国を訪問して香港観光をプロモーションしただけでなく、東南アジアの旅行業界からの代表団も2月に香港を訪問した。これらの取り組みにより、香港は今後さらに多くのムスリム旅行者を迎える準備を整えつつある。